AIに作らせたゲームはなぜ単調になるのか(遊んで直した6つ)
仕様どおりに動き、自動テスト43件も全部通ったのに、遊ぶと退屈でした。実際に遊んで出てきた不満6つと、それぞれ何を直したかを、数字と作業時間つきで残します。AI に「面白くして」と言っても面白くならない理由の記録です。
公開 2026年9月18日
この記事の要点4 points
- AI は仕様どおりに作る。 「面白いか」は仕様に書いていないので、誰も見ていない。
- 最初の版は自動テスト43件が全部通っていて、それでも退屈だった。 動くことと遊べることは別。
- 直したのは6点。 作り直しに合計5時間25分かかり、テストは43件から60件に増えた。
- 効いた直し方は、見た目を足すことではなく毎回選ばせることと必ず終わらせることだった。
目次5章
検証した環境最終確認 2026年9月18日
- Windows 11
- Unity 6.6(6000.6.0f1)
- Claude Code(Opus 5 / 思考レベル 高)
書いてあるのは、この環境で実際に試した結果です。ツールの仕様や料金は変わるので、重要な判断の前には公式の情報も確認してください。
壁を跳び移って登るゲームを AI に作らせました。仕様どおりに動き、自動テストは43件すべて通り、ブラウザでも60fpsで動きました。そして遊んでみたら、30秒で飽きました。
AI が手を抜いたわけではありません。私が「面白い」を仕様に書いていなかっただけです。
6点
遊んで出てきた不満
どれも仕様は満たしている
5時間25分
直しにかかった時間
5回に分けて指示
43→60件
自動テスト
判断の基準を足した分
81秒
完璧に遊んだ1プレイ
以前は「終わらない」
仕様を満たしたゲームは、遊べるゲームではない
最初の版の仕様は、こんな内容でした。壁から壁へ跳び移って登る。下から迫るものに追いつかれたら終わり。トゲに当たったら終わり。地形は自動生成で、理不尽な配置は作らない。
全部できていました。それでも退屈だったのは、プレイヤーが何も選んでいなかったからです。跳ぶ時機を早くしても遅くしても、得も損もしない。だから「うまくやろう」が発生しません。
AI は「動くもの」を作る。「選ばせるもの」は指示しないと出てこない。
出てきた不満と、直したこと
上手くなるほど終わらなくなる
バランス調整 1時間10分- 症状
- 慣れると、いつまでも登り続けられる。いつ終わるかが自分で決められないので、記録を競う気にならない
- 原因
- 下から追ってくるものの速さに上限(毎秒 2.8)があり、跳び続ける登り速度がそれを超えていた
- 対処
- 追ってくる帯を1m 登るごとに 0.020 ずつ速くし、上限を 6.4 に上げた。地形が想定する登り速度はいつか頭打ちになるので、必ず追い抜かれる
どこが危険なのか、初見で分からない
- 症状
- 赤い部分が「当たると死ぬ所」なのか「ただの背景」なのか判断できない
- 原因
- 危険を四角い赤帯で描いていた。四角は地形の一部にも見える
- 対処
- トゲを壁から生えた三角の歯に、下から迫るものを上辺がギザギザの帯にした。形そのものを「痛そうな形」にする。プレイヤーも白+青緑の輪に変えた(黄色のコインと見分けがつかなかった)
背景の粒が目に痛い
- 症状
- 速さを出すために流していた小さい白い点が、ちらついて見ていられない
- 原因
- 縦にスクロールする画面で、細かい点を高速で動かしていた
- 対処
- 点を全部消した。速さは、実際の移動速度と、高度で赤黒くなる背景、100m ごとの目印で伝える
登るのが遅い
- 症状
- 画面の流れがもたつく。跳んでいる時間が長く、待たされている感じがする
- 原因
- 1回の跳びの片道に 0.61秒 かかっていた
- 対処
- 登り 1.2→1.7、跳びの横 14→17、上 10.5→11.5、重力 19→21 に上げて、片道を 0.51秒 に短くした
ずっと同じことをしている
1時間20分- 症状
- 操作が「跳ぶ」1つしかなく、跳ぶ時機にも良し悪しが無い
- 原因
- 押すか押さないかの2択で、どちらにも損得が無かった
- 対処
- 溜め跳びを足した。押し続けてから離すと大きく跳ぶ(+3.1 → +6.4)。ただし溜めている間は登る速さが 1.7→0.35 に落ちるので、下から迫られる。さらに高得点のコインを溜め跳びでしか届かない高さに置いた=毎回「急ぐか、盛るか」を選ぶ
トゲの配置がワンパターン
1時間10分+55分- 症状
- 地形は毎回違うはずなのに、どこも同じ形に見える
- 原因
- すき間を「下寄せに1本置く」だけで埋めていた
- 対処
- 6種類の模様(下寄せ/上寄せ/真ん中/二股=窓/くし=2〜4本/空き)を高さに応じて選び分ける。空中の天井(ふつうに跳べば通れるが、溜め跳びだと当たる)と、高さで変わる壁の幅(3.2/3.9/4.6)も足した
効いたのは「選ばせる」と「終わらせる」だけだった
6点を並べると、見た目の直しが3つ、遊びの構造の直しが3つです。手応えが変わったのは構造の3つでした。見た目は「気にならなくなる」だけで、面白さは増えません。
見た目を直しても変わらないもの
構造を直すと変わるもの
「面白くならない」と感じたときに足しがちなのは、エフェクト・障害物の種類・演出です。私も最初はそこから直そうとしました。実際に効いたのは、1回の跳びごとに損得のある選択を作ったことと、上手い人でも必ず終わるようにしたことの2つです。
AI への指示は、感想ではなく合格の条件にする
同じ作業を AI に投げるとき、言い方を変えるとそのまま結果が変わりました。
これでは見た目が増えるだけ
- もっと面白くして
- 単調だから変化をつけて
- 難易度を上げて
これなら構造が変わる
- 1回の跳びごとに、得と損が両方ある選択を作って
- 上手い人が完璧に遊んでも必ず終わるようにして。1プレイの中央値が 45〜115秒 に収まることをテストで確かめて
- 高いところの報酬は、新しい操作を使わないと届かない位置に置いて
右側は、そのままテストにできます。実際、作り直しで増えたテスト17件は、ほとんどがこの種類のものでした。
遊びの条件として書いたテスト(抜粋)
面白さそのものはテストできない
テストにできるのは「面白さの必要条件」だけです。面白いかどうかは、結局その場で遊んで決めるしかありません。 ただ、条件をテストにしておくと、次に数字をいじったときに壊れたことがすぐ分かります。溜め跳び・空中の天井・壁の幅の変化と、遊びの要素を足したときは毎回どれかが落ち、そのたびに設計の穴が見つかりました。
まとめ
- AI は仕様どおりに作る。面白さは仕様に書かれていないので、放っておくと誰も見ていない
- 最初の版は自動テスト43件が全部通っていて、それでも30秒で飽きた
- 効いたのは、毎回選ばせる(溜め跳びと、それでしか届かない報酬)と、必ず終わらせる(追ってくる帯を高さに応じて加速)の2つ
- 見た目の直し(危険の形・背景の粒・速度感)は、面白さではなく理不尽さと不快さを減らす
- AI に渡すのは感想ではなく、テストに書き換えられる条件
FAQ
よくある質問
AI に「もっと面白くして」と指示すると、どうなりますか?
見た目の要素が増えます。障害物の種類やエフェクトは足されますが、遊びの構造(毎回何を選ばされるか、いつ終わるか)は変わりません。合格の条件を数字で渡さないかぎり、AI には「まだ足りない」と判断する材料がありません。
遊びが単調になっているかどうかは、どう判断すればいいですか?
1プレイの中で、プレイヤーが選ばされる場面が何回あるかを数えてください。このゲームでは、作り直す前は0回でした。押すか押さないかだけで、どちらにも損得が無かったからです。
テストは何の役に立ちましたか?
「必ず終わる」「理不尽な地形が作られない」のような、数字で書ける条件の維持に役立ちました。逆に、面白いかどうかの判定には使えません。そこは実際に遊んで決めました。
作り直しにどれくらいかかりましたか?
6点で合計5時間25分でした。内訳は、遊びの構造と見た目の作り直しに1時間10分、溜め跳びの追加に1時間20分、トゲの模様と空中の天井に1時間10分、スコアの厚みに50分、壁の幅の変化に55分です。
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